打開策は明らかだ!

先物失政を清算する時

 商品先物取引新時代なのだという。確かに、狭義の――商品先物取引法によって規制が監督されるところの受渡しを前提とする現物先物取引と商品デリバティブ取引を対象とする取引所取引に関する限り、ほば最終形態に等しい東西二商取体制(東京商品取引所と大阪堂島商品取引所)の発足は、形式的には”新時代”といえるのかもしれない。しかし肝心のキー・ワードもそれにふさわしい結果を伴わないまま繰り返されるうちに、陳腐化することになる。今回の新時代はそれが文字通り、カケ声倒れに終るなら、陳腐化どころか最後の(薬界の息の根を止める)ものとなりかねないというべきであろう。

改悪の連続で

 行政も業界人も、国内商品先物市場が現状のままで考えているものは誰もいないハズである。しかし、現在のマーケットを利用者や参加者にとって魅力があり、個人にとっても事業者(企業、産業界全般)にとっても利便性があり、ヘッジにせよ資産運用にせよ利用価値があることで社会のあらゆる層が自らの意志で活用。そのことを前提に、国内外からの取引参加によって市場基盤と信頼性が確保され、それゆえ広範で多様な資金が一過性でない豊かな流動性をもたらすような市場政策がとられることはこれまで一度もなかったのではないか。戦後の商品取引所再開以降、フシ目ごとに様々な制度(法)改正やルールの変更が行われてきた。それは一見、時代や経済の変化に対応したものではあったが、結局はその大半は常に規制強化と行政権限の拡大に繋がったうえ、最終的には市場(マーケット)の衰退と同義であったのは業界の現状(惨状)をみれば一目瞭然である。

 関係者は口を開けば「流動性拡大が喫緊の課題」という。行政も商先法の完全施行で不招請勧誘禁止を明文化するという”成果”を得たことで、ここへきて「市場の活性化(策)が必要」などという文言を審議会レベルで匂わすという高等戦術を弄したりしている。しかし、それによってもたらされたものといえば、たとえば損失限定取引とか、東京穀物商品取引所の自壊にひたすら傍観を決め込むことで自らの行政責任を放棄したり、あるいはせっかく72年ぶりの上場を実現したコメ先物を、民主党政権の自滅を計算したかのような”無策”によって故意に本上場を頓挫させようとしているかにみえる。

中身欠落のまま

 そして、マーケットの中身を欠落させたまま、機械的な東西二商取への再編は、あたかも商取行政そのものを清算し、総合取引所なるもののなかに「責任」を排して「権限」だけを温存するというものではないのか。それは、たとえば省令改正によって自社のデリバティブ(事実上は取引所FXのみ)顧客への不招請勧誘の容認といった実に部分的な規制緩和姿勢の一方で、重箱の隅をつっつくような不招請勧誘行為への検査強化という二律背反が罷り通っていることに如実に示されている。まさに、流動性拡大のためにいかに市場参加を図るかに日夜、懸命な企業努力を重ねている取引業者の事業意欲を削ぐことで行政権限を自己確認するという悪弊が露といえよう。

 では、肝心の市場流動性はどうか。

 為替市場における円安進行を背景に円建て金価格が急騰、急落商状を展開。東京金(先限)上場末初の5000円台示現など新高値を連発したことなどから出来高が急増。これが全体を引っ張る格好で2月の一日平均出来高は、1月の14万3555枚から16万枚からみに膨らんでいる。総取組高は1月末の40万6000枚が41万枚台と微増にとどまっているが、旧東工取と東穀取の統合効果は数字的には確かに認められないではない。しかし、たとえば2月一8月の東穀取の一日平均出来高が5225枚だったのに対し、同12-22日の東商取農産物・砂糖市場はコメが除外されてはいるが4516枚となっている。この時点で大勢を論じるには余りにデータ不足ではあるが、大阪堂島商取の東京コメの売買低迷と合わせて考えると、農産物市場振興の成否が、業界の先行きを決定的に左右する公算があるといえそうだ。

政策不況払拭を

 それにしても、我々(業界)はとこへ向かっているのだろうか。上場各社の2012年度4-12月期決算では全社が減収を余儀なくされるなかで、それでも黒字を確保(黒字転換を含む)する企業と業績改善の糸口を見い出せない企業の格差が歴然としている。こうしたなかで、老舗大手の上場廃止が表面化するなど、旧取引員を取り巻く経営環境は厳しさを増す一方である。主要原材料の大半を輸入に依存するという日本経済の基本構造を無視する格好で、国内商品先物市場主要(キー)プレイヤーを、個人(一般委託者)と商品(専業)取引員から海外資金とプロのトレーダーに移行させようとしたことが市場崩壊に繋がるという”失政”が招いたのが今日まで続く政策不況の実態である。それは東西二取体制への再編も総合取構想も大差はない。

 打開策はもはや明らかではないか。

 

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