東京金融取引所は2025年4月から2030年3月までの中期経営計画を策定した。米国政策の不確実性や地政学リスクが高まる中、国内では四半世紀ぶりに金利復活する一方、海外では金利引き下げに舵を切るなど金融政策の違いが市場に広範な影響を及ぼす環境となっている。同社は顧客ニーズに合致した商品開発を最優先課題とし、リテール事業拡大とホールセール事業再建の両輪で成長を目指す。
リテール事業では既存商品の競争力強化と国内外の顧客基盤拡大に注力する。くりっく365は新興国通貨を中心とした制度見直しで市場シェア向上を図る。くりっく株365では流動性拡充やスプレッド縮小など競争力強化により市場拡大を推進する。新商品開発では商品ラインナップ拡充に加え、オプション市場開設を検討。規制動向を注視しつつ暗号資産関連商品の検討も進める方針だ。
顧客基盤拡大では取引参加者拡充による新規顧客獲得、現地ブローカーとの連携強化による海外リテール層開拓、取引参加者との協働プロモーション展開により国内外の法人取引拡大を図る。営業強化による新規参入事業者獲得や海外リテールブローカー、多様な潜在投資家へのマーケティング強化も推進する。
ホールセール事業では円金利デリバティブ取引ニーズ取り込みによる市場流動性強化を図る。特にTONA先物取引拡大により円金利先物市場の活性化を目指す。国内大手金融機関やヘッジファンドなど海外機関投資家の取引拡大も進める。有価証券関連デリバティブ市場開設についても検討を進める計画である。
子会社における信用リスク管理事業では、多様なユーザー獲得と取扱対象取引拡大、プラットフォーム機能拡張を検討する。信用リスクプラットフォーム提供と認知度向上により大小金融機関等ユーザー確保を図る。システム面では新商品・新市場対応のため汎用性と拡張性を備えた新システムを開発し、効率化・自動化を進めて安定運用を実現する。
組織・人事では若年層教育強化・研修制度充実、シニア層の多様な働き方・活躍支援、多様な人材獲得により組織活性化を推進する。2025年度は新中期経営計画初年度として新システム要件定義・設計工程完了を目指す。金融環境変化に対応した戦略展開が注目される。