商品先物取引の苦情4年連続ゼロ、問い合わせも減少=日本商品先物取引協会

 日本商品先物取引協会は29日、2024年度の相談等業務レポートを公表した。商品先物取引に関する苦情受付件数が4年連続でゼロ件となり、問い合わせも前年度比6.2%減の136件と減少傾向が続いている。過去に社会問題となった不適切な勧誘慣行が根絶され、業界の健全化が着実に進んでいることを裏付けた。

 同協会の相談センターが受け付けた問い合わせ件数は136件で、前年度の145件から9件減少した。相談センター開設から26年目となる2024年度は、苦情申出が2021年度から4年連続でゼロ件を記録。紛争仲介も前年度の2件から1件に減った。

 問い合わせの内訳では、商品デリバティブ取引が77件と全体の56.6%を占めた。注目すべきは取引方法の変化で、店頭取引22件中19件がインターネット取引だった一方、国内取引では32件中26件が対面取引と、商品によって取引手法の棲み分けが鮮明になっている。これは投資家の多様なニーズに応える市場構造の変化を示している。

 申出の契機については、インターネットで調べて相談するケースが79件(58.1%)と最も多く、15年連続でトップを維持している。デジタルネイティブ世代の参入や情報収集手段の変化が、問い合わせパターンにも反映されている形だ。

 商品先物取引業界は、2011年の改正商品先物取引法施行で、不招請勧誘の原則禁止などの規制強化により業界の浄化が加速した。2020年の総合取引所スタートは、商品と金融の垣根を越えた新たな市場インフラの構築という意味で画期的だった。

 現在の会員数は36社で、このうち国内取引を扱うのが16社、外国取引が9社、店頭取引が22社となっている。商品先物取引仲介業者は2社が登録されている。会員数の絞り込みが進む一方で、残存業者の経営体質は着実に改善されている。

 ただし、業界が直面する課題も少なくない。個人投資家の参入減少や市場規模の縮小は構造的な問題として残る。また、暗号資産やESG投資など新しい投資手法の台頭により、商品先物市場の存在感は相対的に低下している。

 協会は同日開催した第207回理事会で、2024年度事業概況報告と収支決算、会員理事候補者の選定について原案通り承認した。6月19日に第34回通常総会を開く予定だ。

 商品先物市場は資源価格の適正な形成や企業のリスクヘッジ機能を担う重要なインフラだ。苦情ゼロの実現は業界再生の象徴的成果だが、真の復活には市場活性化と投資家基盤の拡大が不可欠となる。

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