日本商品先物振興協会は9日、金融所得課税の一体化に関する個人投資家向けのアンケート調査を開始した。商品先物と上場株式などの損益通算範囲の拡大を政府に働きかける狙い。抽選で謝礼も用意し、広く意見を募る。
政府が「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げる中、税制の歪みが個人の資産形成を阻害しかねないとの懸念が浮上している。現行制度では商品先物取引で生じた損失を、株式投資の利益と相殺できない。同協会は、この「税制の壁」が多様な金融商品への投資を妨げているとみて、損益通算範囲の拡大を長年要望してきた。
今回の調査は、政府の「資産所得倍増プラン」や新NISA(少額投資非課税制度)の導入で投資家層が拡大する好機を捉えた動きといえる。個人の投資活動が活発化する一方、複雑な税制が足かせとなれば、政策効果が薄れかねない。包括的な金融所得課税の一体化は、個人投資家が真に自律的な資産運用を行うための土台作りという側面も持つ。
損益通算が実現すれば、投資家はより柔軟な資産配分(アセットアロケーション)を実行しやすくなる。例えば、株式の値上がり益を確保しつつ、商品先物でインフレリスクをヘッジするといった複合的な戦略が取りやすくなる。損失が出た場合でも他の金融商品の利益と相殺できるため、リスクを取った投資を促し、デリバティブ市場の流動性向上にもつながる可能性がある。
調査はウェブサイト上で7月31日まで実施する。回答者の中から抽選で100名に食事券を進呈する。同協会は集まった意見を分析し、金融庁や政府税制調査会への要望活動に生かす方針だ。
令和7年商品デリバティブ等に関する税制アンケート調査