金ETF流入5年ぶり高水準、25年上半期380億ドル=WGC

 ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の発表によると、2025年上半期の世界の金上場投資信託(ETF)への資金流入額が380億ドル(約5兆7000億円)に達した。上半期としては2020年以来5年ぶりの高水準で、世界的なカネ余りと地政学リスクの高まりを背景に、投資資金が金市場へ向かう構図が鮮明になった。

 記録的な資金流入と金価格の高騰が相乗効果を生み、世界の金ETFの総資産運用残高(AUM)は6月末時点で過去最高の3830億ドルに膨張した。保有量も397トン増の3616トンと、34カ月ぶりの高水準を記録しており、市場の過熱感も漂う。

 流れを主導したのは北米の投資家だ。上半期の流入額は210億ドルと全体の半分以上を占めた。米連邦準備理事会(FRB)がインフレと景気減速への懸念を示すなか、市場では利下げは時間の問題との見方が支配的だ。金融緩和を見越したドル安観測が、代替資産としての金の魅力を高めている。イスラエルとイランの対立など、地政学リスクの高まりも安全資産への資金逃避を加速させた。

 欧州でも60億ドルの純流入となり、22年下半期から続いた流出基調に終止符を打った。欧州中央銀行(ECB)が利下げに踏み切ったほか、英国でも金融緩和期待が高まるなど、欧州全体が金融緩和局面にシフトしつつある。金利を生まない金の相対的な投資妙味が増した格好だ。

 特筆すべきはアジアの動きである。上半期の流入額は過去最高の110億ドルに達した。中でも中国が88億ドルと突出しており、その存在感が際立つ。激化する米中貿易摩擦に加え、国内の不動産不況や成長鈍化といった構造的な問題が、代替資産を求める投資家を金に向かわせているとみられる。人民元安に対するヘッジ需要も根強い。

 世界的な金融緩和への潮流と、各地で頻発する地政学リスクが「双輪」となり、金需要を押し上げる展開が続く。市場の最大の関心事であるFRBの利下げが本格化すれば、この流れは一段と勢いを増す可能性がある。ただ、歴史的な高値圏にある金価格への警戒感もくすぶり、今後の市場は値動きの激しい展開も想定される。

 

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