日産証券、台湾から株価指数取引受託=縮む国内からアジア個人マネーへ

 日産証券は10日、台湾の個人投資家を対象に東京金融取引所(TFX)の株価指数証拠金取引「くりっく株365」の取引受託を開始した。海外の業者経由で同商品の個人フローを取り込むのは国内初。国内市場の成長鈍化が懸念される中、成長著しいアジアの個人マネー獲得へ布石を打つ。

 提携先は台湾の先物取引大手、群益期貨。同社は台湾の海外先物取扱高で上位にあり、同国の業者で唯一株式を上場する有力企業だ。日産証券はかねて海外金融機関からのインバウンド受託に注力してきた。今回の提携で、機関投資家中心だった海外戦略の裾野を個人投資家分野へと広げ、ホールセールビジネスのさらなる拡充を狙う。

 日産証券にとって台湾は戦略的な重要市場だ。すでに大阪取引所の日経225先物などで台湾の先物取引業者14社から取引を受託する。2021年からは同国の華南期貨を通じて為替証拠金取引「くりっく365」のフローも取り込んでおり、実績を積み重ねてきた。今回はその対象を満を持して株価指数へと広げた格好だ。

 この動きの背景には、日本の金融業界が直面する構造的な課題がある。人口減少で国内市場が縮小均衡に向かう中、新たな成長軸の確立は急務。地理的に近く、アルゴリズム取引を駆使するセミプロ級の個人投資家が多い台湾市場は、海外展開の足がかりとして魅力的だ。

 今回の取り組みは、日本の取引所と証券会社による国際化への連携プレーの成果といえよう。TFXは台湾金融監督当局との交渉で地ならしを進めてきた。同日には「くりっく株365」で新たに4商品が認可され、投資の選択肢を拡充。取引所が制度の壁を取り払い、証券会社がビジネスとして実を結ぶ好循環モデルを築いた。

 単なる一企業の事業拡大に留まらない。日本の金融市場が海外の個人マネーを呼び込む、新たなモデルケースとなる可能性を秘めている。国内で進む「貯蓄から投資へ」の動きに、海外からの資金流入という新しい潮流を生むきっかけにもなりそうだ。台湾での成功を足がかりに、他のアジア市場へと展開できるか。今後の動向が注目される。 

 

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