金価格、投機筋の再参入で上値余地=WGC

 ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は7月の金市場動向に関するレポートを公表した。7月の金価格は米ドル高による逆風にもかかわらず、わずか0.3%上昇し1オンス3,299ドルとなった。年初来でみれば26%高と堅調。市場関係者は、今後の注目点を商品先物市場での投機筋による買い持ちポジション(ネットロング)の動向に据える必要があるとの見方が強まっている。

 同レポートは、現状の金価格に比べて投機筋によるポジションの水準が依然として低い点を指摘する。本来であれば価格の上昇に対応してネットロングが拡大してもおかしくないが、2025年初頭の関税関連取引の解消や、一部投資家の利益確定によるポジション縮小が影響したとみられる。ただ、最近のポジションは回復傾向にあり、今後は再びポジションを積み増す「余地」がある状況だ。

 注目したいのは、金市場を取り巻くファンダメンタルズの変化だ。米ドルは構造的な下落基調が強まり、主要なソブリン債の実質金利も既に「制約的」な水準に達しつつある。加えて、地政学リスクや政策不透明感も引き続き高い。今後、米国の労働市場の弱さが契機となり、金融政策が緩和方向に転じれば、長期金利にも低下圧力がかかる可能性が高い。こうした条件下では、安全資産とされる金への投機資金の流入が一段と強まる展開が予想される。

 金価格は中長期的に市場心理やセンチメントの変化に左右される場面が多いが、足元では金利やドルのトレンド転換が十分材料となる。投資家が注目すべきは、金ETFや中央銀行の需要動向だけでなく、投機筋によるCOMEXでのポジションの積み増しの動きである。直近でみられるネットロングの「積み増し余地」に市場の上値余地を見いだす向きも増えている。

 今後の金価格見通しは、単なる相場材料の羅列だけでなく、米国の政策転換シナリオや市場のリスク認識の変化も踏まえた多面的な分析が不可欠である。WGCのレポートは、こうした複雑な市場動向を理解する上で、大きな示唆を与えている。

 

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