ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)は12日、2025年のプラチナ市場が3年連続で大幅な供給不足になると示した。年初来の価格上昇でETFから売りが出たが、中国の現物投資と宝飾需要、取引所在庫の積み上がりが吸収し、逼迫は続く見通しだ。
価格は年初来で大きく上昇した。ETFは利益確定の動きが強まったが、市場全体の緩和には至っていない。投資家心理は価格インセンティブに反応しやすい一方、実需は構造的に底堅い。需給の非対称性が鮮明である。
中国の需要が想定を上回る。地金・コインの投資需要に加え、宝飾の受注も強い。交易所の取引量は直近年の年間水準に肩を並べる。価格上昇局面でも、販売鈍化は一時的との見方が現場で強い。新規ファブリケーターの参入も相次ぎ、製販体制の厚みが増した。
米国の関税リスクは在庫行動を変えた。取引所在庫は再び積み上がりに転じ、想定を上回る増加となった。政策要因が在庫の地域配分を変え、需給の機動的なバッファーとして機能している。市場のタイトさはリースレートの上昇や店頭のバックワーデーションにも表れる。
地上在庫は減少が続く。過去の不足で取り崩しが進み、戻しの余地は限られる。供給面では一次鉱山とリサイクルの回復力が弱い。構造的制約。価格が戻っても供給の弾力は乏しい。
当面の価格弾力は投資フローに依存するが、需給均衡の回復は実需に左右されにくいとみる。ETFの売りは価格のボラティリティを高めるが、実需の厚みが押し目を形成しやすい。政策要因による在庫の再配分は、短期の供給アクセスを改善する一方、地上在庫の総量縮小という中期のタイト化を覆さない。
投資家にとっては、三つの論点が重要である。第一に、ETFフローは逆風でも規模は限られ、構造的不足を解消しない。第二に、中国の需要は価格感応度があるが、供給制約が相対的に強く、需給の底上げ効果が続く。第三に、政策リスクは在庫の場所とタイミングを動かし、期近の逼迫指標を揺らすが、需要の下支えと相殺し合う。
価格上昇と在庫積み増しが並走する局面は、金融要因と実需要因の二層構造を映す。短期はフロー、長期はストック。ETFの売りが続いても、在庫の取り崩し速度は鈍りにくい。需給は段階的に引き締まる。市場の注目点は、実需の粘りと供給の弾力差、そして政策の在庫配分への影響である。これらを踏まえると、プラチナの投資妙味は維持されるだろう。ボラティリティは高いが、不足の連鎖が続き、押し目は実需に支えられる構図だ。