SAF成長、プラチナ需要の牽引役に=WPIC

 プラチナ需要に大きな構造変化が生まれようとしている。ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)は最新の分析で、持続可能な航空燃料(SAF)が石油精製向けに代わる新たな需要の柱になるとの見方を示した。2050年にはSAF関連の需要が年26万オンスを超える規模に成長する可能性がある。

 背景には、脱炭素化が困難な「ハード・トゥ・アベイト」セクターである航空業界の事情がある。現状、SAFは長距離フライトの排出量を削減できる唯一の実用的な選択肢だ。その製造工程、特に燃料が低温で凍結するのを防ぐための異性化プロセスでプラチナ触媒が決定的な役割を果たすため、プラチナはSAF普及に不可欠な金属と位置づけられる。

 需要予測の鍵を握るのが、SAFの製造技術の移行だ。現在は廃食油などを原料とするHEFA方式が主流だが、原料の供給に上限があるため成長は頭打ちになるとみられる。本命は、再生可能エネルギー由来の水素と回収した二酸化炭素で作る合成燃料「PtL」。この方式はHEFAに比べて格段に多くのプラチナを触媒として使用するため、主流技術が移行するにつれてプラチナ需要が必然的に増加する仕組みだ。

 そのインパクトは数量的にも大きい。WPICは、SAF製造向けのプラチナ需要が現在のほぼゼロから2050年には年26万オンス超に急増すると予測する。これは新たな需要であるだけでなく、電気自動車(EV)の普及に伴い減少が見込まれるガソリン車の排ガス浄化や石油精製向けの需要減を補って余りある規模であり、市場の需給を支える重要な緩衝材となり得る。

 ただし、このシナリオの実現は各国の政策に懸かっている。WPICは、SAFの混合義務化や生産インセンティブといった政府の強力な後押しが市場成長の絶対条件だと指摘。プラチナの未来は、自動車市場の動向に加え、政策が主導する世界的なエネルギー転換の行方と一層強く結びつくことになりそうだ。

 

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