米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)は11日、米金融市場の規制調和に向けた包括的な覚書(MOU)を締結したと発表した。両機関の連携を強化し、規制の重複排除や一貫性のある枠組みの構築を通じて、投資家保護と金融イノベーションの推進を図る。今回の合意に基づき、暗号資産(仮想通貨)を含む新興技術やデリバティブ市場における監督の明確化を目的とした「合同調和イニシアチブ(Joint Harmonization Initiative)」を立ち上げた。
SECのポール・S・アトキンス委員長は同日の声明で、長年の「管轄権争い」や規制の重複がイノベーションを阻害し、市場参加者を国外へ流出させてきたと指摘。「この覚書は両機関の調和に向けたロードマップとなり、米国の金融イノベーションにおける指導力を支える」との認識を示した。また、CFTCのマイケル・S・セリグ委員長も、重複するルールの排除や規制の空白解消により「米国金融の黄金時代を切り開く」と述べ、包括的かつシームレスな市場監視体制の構築に意欲を示した。
今回の米国での規制調和は、日本市場における暗号資産(仮想通貨)などの制度設計にも影響を与える可能性がある。金融庁(FSA)とSECは2月27日、東京で「日米金融規制当局間ハイレベル対話(Spring FSA-SEC Financial Regulatory Dialogue)」を開催した。この対話において、暗号資産やデジタル資産の動向を含む規制・監督上の諸課題について意見交換が行われており、米国側が打ち出した「最小有効線量(Minimum Effective Dose)」の規制思想や、商品定義の明確化といった方針が、日本の今後の制度設計に反映される可能性が高い。
合同調和イニシアチブでは、SECのロバート・テプリー氏とCFTCのメーガン・テンテ氏が共同リーダーを務める。具体的な重点項目として、共通の規制対象となる商品定義の明確化や、清算・証拠金・担保枠組みの近代化を掲げた。さらに、暗号資産など新たな技術への適切な規制枠組みの提供や、取引データの報告要件の合理化、市場横断的な検査および法執行の調整などを進める方針だ。
両機関はこれまで、暗号資産の定義や管轄権を巡り、証券か商品かという立場の違いから対立することも少なくなかった。今回のMOU締結により、定義の整合性を図るとともに、機密性の高いデータ共有の円滑化を推進する。これにより、市場参加者に対して法的予見性を与え、米国の金融競争力を高める狙いがある。SECおよびCFTCは広く一般からの意見公募も開始しており、専用のフォームや会合を通じて市場関係者の声を反映させるとしている。


