米国関税強化でもプラチナ供給不足は続く=WPIC

景気減速懸念が強まるなか、プラチナ市場はむしろ構造的な供給不足に注目すべき時だ。米国による保護主義的な関税政策が世界経済に暗い影を落としているが、その影響は見誤ってはならない。

米国が輸入品に10%の基本関税を課す方針を示し、世界経済の先行きに不透明感が広がっている。フィッチによれば、2025年の世界GDP成長率は2.3%と、わずか4カ月前の予測から0.3ポイント下方修正された。さらにJPモルガンは先週、世界的な景気後退リスクの予測を15%から60%へと急激に引き上げた。

こうした経済見通しの悪化は、資源市場にも当然影響を及ぼす。プラチナの場合、過去10年間のデータを見ると、自動車・宝飾品・産業用需要の伸びは世界GDP成長率と0.8の高い相関関係を示している。景気減速により需要は減少するとの見方が多い。

だが、そこで思考停止してはならない。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の最新分析によれば、最悪のシナリオでも2025年のプラチナ需要減少は約400キロオンス(koz)にとどまる。これは総需要の5%に相当するが、同年の供給不足は848kozと予測されており、需要減少を考慮しても供給不足という構造は揺るがない。

注目すべきは、コロナ禍と現在の状況の質的な違いだ。自動車業界では、米国の輸入車への25%関税で約170万台の販売減少が見込まれるが、これはコロナ禍の年間1000〜1500万台の減少と比べれば、はるかに小さい。さらに、環境規制強化に対応するため、触媒コンバーターでパラジウムの代替としてプラチナを使用する流れ(年間約800koz)が定着している。

産業用需要も、景気減速リスクを織り込み済みだ。WPICは2025年の産業需要を5年ぶりの低水準と予測。さらに、設備投資は2025年までにすでに大部分がコミットされているため、本格的な需要減少は2026年以降にずれ込む可能性が高い。

資源価格の予測は、往々にして目先の経済指標に囚われがちだ。しかし真に重要なのは、構造的な需給バランスを冷静に見極めることである。プラチナは2023年から供給不足に陥り、このトレンドは2029年まで続くとWPICは予測する。その結果、地上在庫は完全に枯渇する見込みだ。

投資家は短期的な市場センチメントに惑わされず、長期的な視点で動向を見守るべきだろう。プラチナは水素経済において重要な役割を果たす希少金属であり、その希少性は今後さらに高まる可能性がある。

米国の関税政策が世界経済に与える影響は否定できないが、それを理由にプラチナ市場の構造的な供給不足という本質を見失ってはならない。むしろ、市場の過剰反応による価格下落は、長期的な投資機会と捉えるべきかもしれない。


Structural platinum market deficits will persist despite US tariffs and associated GDP risks - Platinum Perspectives - Investment Research - World Platinum Investment Council – WPIC®
10 April 2025: Structural platinum market deficits...
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