金投資拡大の黄金機会=WGC、個人投資家の課題と潜在力を探る

 ワールド・ゴールド・カウンシルの最新調査によれば、日本の個人投資家は金投資に課題を抱えつつも大きな潜在的需要を持つ。物価上昇や金融政策の変化が追い風となり、資産防衛の切り札としての金の存在感が高まっている。

 日本の個人投資家のポートフォリオにおける金の割合は、株式や債券に比べて著しく低いという実態がある。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が2024年末から2025年初頭にかけて国内2,000人超の投資家を対象に行った調査によると、株式の保有率は73%に達する一方で、金保有は約2割にとどまる。国内外の経済不確実性が増す中、金の価値保全機能への関心は高まっているが、実際の普及にはまだ課題がある。

 投資家の主要な目標は「資産の成長」と「老後の備え」であり、この点で金は有用である。インフレヘッジや市場変動に強い安定資産として、特に資産規模の大きな投資家においては積極的な金保有が進んでいる。しかし、多くの一般投資家は金の投資方法や価格変動の理解不足により投資を躊躇しており、価格の高さも障壁となっている。一方、過去に投資経験のある層は再投資に意欲的であることも分かった。

 この調査の特徴は、日本の家計金融資産の膨大さに対し、金の占める割合の低さにある。2025年第一四半期の家計金融資産は約2,200兆円にのぼるが、金の潜在需要は依然として顕在化していない。金融資産の多様化が進む中で、金が資産防衛の安全網としての役割を果たす余地は大きい。

 課題解決には、まず金の投資手法や利点に関する体系的教育の強化が欠かせない。投資初心者に分かりやすく商品特性を伝え、「難しい」「高い」といった誤解を払拭する必要がある。また、多くの投資家がスマホやオンラインプラットフォームで資産管理を行う現状を踏まえ、投資の手続きの簡素化や手数料の低減も重要だ。

 さらに注目すべきは、金が株式や日本国債の弱まりつつあるリスク分散機能を補完する可能性だ。近年のインフレと金融政策の制約が日本国債の安定資産としての魅力を低下させ、投資家の資産防衛ニーズが変化している。そうした局面で金は、歴史的にも市場混乱時の価値保存手段としての役割を再認識させている。

 総じて金は国内金融市場における「眠れる巨人」と位置付けられる。情報発信力の向上と利便性の改善が進めば、株式や債券に偏重してきた日本の投資構造に大きな変革が生じる可能性が高い。今後の焦点は、潜在的需要をいかに投資行動へと繋げるかであり、市場関係者や金融機関の連携した取り組みが求められる。

 

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