ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した2025年12月の月次報告によると、金価格は年間で67%上昇し、歴史的な高パフォーマンスで1年を締めくくった。12月だけで4.2%上昇し、銀や白金が供給不安から乱高下するなか、金は着実な上昇軌道を維持した。地政学リスクの質的変化が、ドルから金への資金シフトを加速させている実態が浮き彫りとなっている。
12月の金価格は23日に1オンス4449ドルを付け、2025年で53回目となる史上最高値を更新した。その後4368ドルで引けたが基調は強い。WGCの分析では、地政学リスクを背景としたオプション市場の活発な取引と、中国人民元に対するドルの弱含みが主因だ。年間上昇分の約6割がこうしたリスク要因と関連した買いで説明できるとしており、金利低下効果よりも「不安」が相場を牽引する構図が続いている。
特筆すべきは他の貴金属との対照的な動きだ。12月は中国の輸出規制などを背景に銀や白金が「熱狂」的な急騰を見せたが、これは政策的な歪みによる一時的な需給逼迫(スクイーズ)の側面が強い。対して金の上昇はより構造的だ。金ETF(上場投資信託)は7カ月連続で資金が流入し、投機だけでなく投資家のポートフォリオ防衛という実需の裏付けがある。銀などのボラティリティが金に波及する場面があっても、それは一時的なノイズに過ぎないだろう。
レポートは、金が名実ともに「究極の安全資産」の地位をドルから奪還しつつある現状を鮮明に描き出している。かつては危機時の「有事のドル買い」が定石だったが、ベネズエラ情勢などの地政学イベントに対し、市場はドルではなく金を選好する傾向を強めている。2026年初頭もインフレ期待の高止まりと頻発するリスクイベントが投資家の「不安の脈拍」を上げ続ける限り、ドル離れと金シフトという大きな潮流は変わらない公算が大きい。

