東京都グリーン水素トライアル取引5月実施へ=東京商品取引所

 東京商品取引所(TOCOM)は30日、東京都と共同で実施する「令和7年度第1回東京都グリーン水素トライアル取引」の詳細を公表し、同日から参加申込の受付を開始した。供給者・利用者のダブルオークション方式による取引を5月に実施する。輸送対象期間は7月1日から9月30日まで。脱炭素社会実現に向けたグリーン水素の普及促進と将来的な水素取引所の設立を目指す取り組み。

 東京都が進める水素エネルギーの社会実装に向けた施策の一環である本事業は、昨年度に続き2回目の実施となる。TOCOMは昨年度に引き続き協定事業者として選定された。TOCOMが持つ市場運営の知見を活かし、再生可能エネルギー由来の電力を使用し水電解により製造されたグリーン水素の取引市場形成を支援する。

 取引対象となるグリーン水素は、ISO14687 Grade Dに準拠したものに限定。供給者からは5月14日、利用者からは5月30日に入札を実施する。供給者の参加申込期限は5月12日、利用者は5月28日まで。

 今回の取引では、トレーラー輸送コースとカードル輸送コースの2区分を設定。トレーラーは一基あたり2,484N㎥の水素を、カードルは一基あたり263N㎥の水素を輸送する。前回からの変更点として、供給側も利用側と同様にコースごとに入札を行う方式に改めた。また、利用側入札申込者へは、希望に応じて供給側落札者名も通知する仕組みを新設。市場の透明性向上を図る。

 昨年12月に実施された令和6年度の取引では、供給側落札単価は300円/N㎥、利用側落札単価はトレーラー輸送コースが89円/N㎥、カードル輸送コースが230円/N㎥だった。価格差については東京都が支援する仕組み。

 トレーラー輸送コースでは利用者側の受け取り地点で到着時と返却時に水素量を測定し、使用量に基づいて精算を行う。一方、カードル輸送コースでは、一基につき248N㎥を利用量として一律計算する方式だ。いずれも返却時には1MPa以上の水素を残す必要がある。

 供給側落札者は、売却単価や週当たりの最大数量などを入札。利用側落札者は購入単価や希望購入数量を入札する。輸送費用は利用者が負担し、トレーラー輸送の場合は1回あたり45,000円、カードル輸送の場合は35,000円となる。

 グリーン水素の所有権は、充填したトレーラーまたはカードルが輸送事業者から利用側落札者に引き渡された時点で移転する。また返却時には、輸送事業者へトレーラーまたはカードルが引き渡された時点で未使用水素の所有権が供給側に戻る仕組み。この明確な所有権移転のルールにより、取引の安全性を確保している。

 価格差支援制度は市場形成の重要な支援策だ。供給側落札単価が利用側落札単価を上回る場合、東京都がその差額を供給側落札者に支給する。この制度により、供給側は適正な価格で水素を提供でき、利用側は比較的安価に調達できるメリット。市場黎明期の需給バランスを整える役割を担う。

 気候変動対策が急務とされる中、グリーン水素は脱炭素の切り札として世界的に注目を集めている。しかし、その普及には市場メカニズムの確立が不可欠だ。今回のトライアル取引はその足がかりとなるものであり、黎明期の市場形成を公的な枠組みでサポートする東京都の取り組みは先見性に富む。市場の成熟を見据えた制度設計に期待したい。

 TOCOMは「トライアル取引の事例を積み重ねながら取組を拡大していく」としており、将来的な本格的な水素取引所の設立に向けた基盤づくりを進める考えだ。エネルギー安全保障と脱炭素化の両立に向け、水素市場の育成は急務となっている。この取り組みが日本のエネルギー転換を加速させる礎となることを願わずにはいられない。


    令和7年度第1回東京都グリーン水素トライアル取引について | 日本取引所グループ
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