中銀の金購入、ドル離れ鮮明に=WGC、地政学リスクで自国回帰も

 世界の中央銀行が外貨準備としての金購入を加速させ、基軸通貨ドルからの離脱を鮮明にしている。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が17日に発表した調査で、今後1年で自らの金準備を増やすとの回答が過去最高の43%に達した。ロシアへの金融制裁などを背景にドル依存のリスクが意識されており、資産防衛のために金を自国で保管する「自国回帰」の動きも強まっている。

 調査は世界の中銀73行を対象に実施した。それによると、今後12カ月で金準備を積み増すとの回答は、特に新興国・途上国で48%に上り、全体の購入意欲を牽引する。過去3年間、年平均1000トンを超える異例のペースでの購入が続いており、この構造的な需要が当面続く可能性が高い。

 背景には、ドルに対する根強い不信感がある。回答した中銀の73%が5年後の外貨準備に占めるドルの比率が低下すると予測した。米国の保護主義的な通商政策や、地政学的な対立を背景とした金融制裁の発動が、ドル資産の安全神話を揺るがしているとみられる。ドルの代替として、金やユーロ、人民元の比率を高めるとの見方が大勢を占めた。

 金が選ばれる最大の理由は「危機時のパフォーマンス」(85%)。次いで「効果的なポートフォリオ分散」(81%)が続く。特に新興国では「地政学的リスクヘッジ」を重視する傾向が顕著だ。これは、国際情勢の緊張が高まる中で、どの国の影響も受けずに価値を保全できる金の特性が再評価されていることを示している。

 資産の物理的な安全確保への意識も高まった。金の保管場所として、これまでの英イングランド銀行などに加え「自国内で保管」するとの回答が前年の41%から59%へと急増した。有事の際に海外資産が凍結されるリスクを回避する狙いがあろう。単なる保有から戦略的な活用へと、中銀の金に対する姿勢が大きく変化している実態が浮き彫りになった。

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