ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の調査で、2025年上半期の中国の金宝飾品市場は価格高騰で販売量が落ち込む一方、消費支出は高水準を維持したことが分かった。自己使用目的の購入が需要を牽引し、市場の底堅さを示した。
金価格の高騰が消費者の慎重な姿勢を招いた。25年上半期の金宝飾品の需要量(トンベース)は前年同期比28%減の194トンと、09年以来の低水準だ。しかし、消費支出額は1370億元(約190億ドル)に達し、前年並みの水準を維持。これは、消費者が金への関心を失ったのではなく、より価値の高い製品を選んで購入していることの証左と言える。
売れ筋は、軽量でデザイン性の高い「硬足金」と呼ばれる製品だ。小売業者の32%が売上増を報告した。消費者が単なる重量ではなく、価格高騰下でも購入しやすいデザイン性や付加価値を重視するようになったことの表れだ。中国の伝統文化を取り入れた「伝承細工」も高い利益率で人気を集める。
購入動機で最も大きいのは「自己使用」で、売上全体の37%を占めた。これは24年の27%から大幅な伸びである。経済の先行き不透明感から、資産価値を持つ金を「お守り」のように身に着けたいという安全資産への志向や、自己投資の一環と捉える価値観の変化がうかがえる。一方、結婚関連の需要は19%へ縮小した。
顧客層は中高年が中心だが、18〜34歳の若年層も全体の3分の1以上を占める。彼らは伝統的な資産価値に加え、SNSでの自己表現ツールとして金を求める傾向が強い。この層の取り込みが、市場の持続的成長の鍵を握る。10グラム以下の軽量製品の販売構成比が45%に上昇したことも、若年層の需要を捉えた結果だろう。
小売業者の47%は、今後1〜2年の金製品の売上に期待を示す。ただ、在庫水準を減らすとの回答も42%に上る。需要の底堅さへの期待と、金価格の変動リスクや競争激化による収益圧迫という現実が、小売業者の複雑な経営判断を迫っている。今後は付加価値の高い商品開発力と、緻密な在庫戦略が企業の明暗を分けそうだ。