ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した2025年の金需要統計によると、店頭(OTC)取引を含む年間総需要は前年比1%増の5002.3トンに達し、史上初めて5000トンの大台を突破した。
2025年の金市場は、価格高騰がさらなる投資を呼び込む「記録の連鎖」に沸いた。ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の金価格は年間で53回の最高値を更新。年平均価格は1オンス2361.5ドルと前年の1940.5ドルから2割強上昇した。この記録的な価格上昇により、総需要額は前年比45%増の5550億ドル(約83兆円)と過去最高を記録。価格高騰が需要を抑制するのではなく、むしろ資産価値の向上を狙った投資資金を呼び込む循環が鮮明となった。
需要の主気筒となったのは投資活動だ。金上場投資信託(ETF)は年間で801.2トンの買い越しを記録し、世界全体の保有量は4025トンと過去最高を更新。地政学リスクへの懸念や米ドルの先行き不透明感に加え、金利低下への期待が投資家の心理を強気に傾かせた。地金(バー)・コイン投資も1174.1トンと12年ぶりの高水準に達しており、特にインドや中国の投資家が価格上昇局面での「乗り遅れ」を避ける形で資金を投じたことが読み取れる。
中央銀行による買い入れは863.3トンと、前年の1037.4トンからは17%減少したものの、歴史的高水準を維持した。外貨準備の多角化を目的とした買いは依然として地理的に広く分散しており、ドル一極集中を避ける各国の構造的な戦略が、金価格の強力な下支えとして機能している。
一方で、価格高騰の直撃を受けたのが宝飾品分野だ。加工需要は1683.0トンと前年の2086.3トンから19%減少した。主要消費地であるインドや中国での買い控えが響いた形だが、支出額ベースでは18%増の1720億ドルと過去最高を記録。消費者が「より少量でも価値の高い金」を求める傾向を強めており、単なる装飾品から資産性を重視した購買行動への変容が見て取れる。
テクノロジー分野は322.8トンと堅調に推移した。消費者向け電子機器の停滞を、人工知能(AI)関連の旺盛な需要が補完。電子部品向けは270.4トンを確保しており、先端技術分野における金の不可欠性が改めて示された。
供給面では、金鉱山生産量が前年比1%増の3671.6トンと過去最高を更新。リサイクル金も3%増の1404.3トンと伸びたが、価格の上げ幅に対して供給の反応は緩やかだ。2026年に向けても地政学的な緊張は解消されず、投資と中央銀行による「守りの資産」としての需要が市場を牽引し続ける見通しだ。

