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真夏の夜の悪夢が進行(8/15日号誌面)


極端に細る商いの背景

 いささか厳密性に欠け、蓋然性に偏る話ではあるが、いま、業界の足元で我が商品先物市場(マーケット)が急激に崩れ去りかねないという由々しき事態が進行している。もちろん、業界人ならそんなことはとっくに承知之助の織り込み済み、いまさら大仰に騒ぐのほどのことではないのかもしれないが、徒らに無視してこのまま本当に取り返しようのない状況に陥ってしまえば、市場と業界は文字通り灰燼に帰することになってしまうのではないか。老婆心と嗤う向きもあるかもしれないが、今月というよりは7月の後半から国内商品先物の商い(出来高)が極端に細ってきている。俗に二八(にっばち)といって、2月、8月は商売が振るわなくなるというが、事態はそんな冗談や季節要因をはるかに超えた深刻なものというべきではないか。

一日8万枚?

 8月入り以降といっても手元のデータが少な過ぎて、それで全体を分析、判断するには材料不足ではあるが、それでも8月8日現在(六営業日)の一日当りたり平均出来高は8万枚を下回っている。単純にこのまま月間出来高(23営業日)に当て嵌めると、最悪の場合、180万枚を超えるか否かの水準ということになる。この時点での月間枚数を予想することにそれほどの意味はないが、それでも、今年4月の200万枚割れのショックを超える衝撃となるのではないか。急激な出来高縮小の要因は明らかではないが、ひとつだけハッキリしているのは金を筆頭とする貴金属の商い低調がある。たとえば、今月7日の金(標準取引)の出来高は1万9221枚と2万枚の大台を下回った。金ミニも3233枚と極端な薄商いであった。

 東京工業品取引所の今期の一日平均出来高は5月以外は10万枚を割り込んでいる。さらに、7月は8万2938枚、今月に至っては7万枚を下回るペースで推移している。周知の通り、今期の計画枚数は前期実績の「12万6千枚」をベースに黒字確保を目指している。東京穀物商品取引所の農産物市場(コメ除く)が来年2月をメドに移管されるが、このことを含めても、計画枚数の実現は覚束ないのが実情とはいえないだろうか。東工取ではDMA(ダイレクトマーケットアクセス)などで、海外からの直接的な取引参加などを通じた市場拡大策を目論んでいるが、肝心の足元の流動性がこれほど枯渇しているなかで、果たして東工取のマーケットを利用しようという海外ニーズがどれほど期待できるだろうか。

プロ化は完全破綻

 それでも、東工取の市場を軸にする以外に国内商品先物の再生はないのも事実。前述した通り、計画枚数を大幅に大きく下回るという商いのレベルでは、海外はもちろん、国内の取引所ビジネス再編の流れのなかで、相対的な地位低下は必至である。七月二十七日に総合取引所の法制化を目指す金融商品取引法改正案が参院で可決された。同法案審議の過程では、東工取の証券取引所との統合が既定事実と見なされる場面すらあったが、それほど国内の商品先物システム(法制、取引所、マーケット、の取引業者)そのものの存在感が乏しいことを示しているといえよう。

 東京・大阪両証券取引所の統合が決定し、少なくとも証券の総合取引所化は法的にも経営的にも進行することとなった。いまは独自路線を取る東京金融取引所も取引所FXの相対人気の後退から、いずれは総合取に合流するのではないか。そうなった場合、東工取、さらには関西商品取引所を含めた商品先物市場はどのようなプレゼンスにあるのだろうか。もし、かりに、現時点のようなマーケットの規模(出来高など)だとしたら、その形態がホールディングス(持ち株会社)であるとか、所管省庁がどうだとか、自主規制団体のありようが云々…といった問題もまさに「どうでもよい」ということになるのではないか。受託ビジネスはもちろん、自己ディーリングを含めた国内における商品先物取引業の将来性に見切りをつける格好で事業から撤退する動きがここへきて再び活発化している。

金軸に先物定着を

 企業の経営判断は勿論、全く自由である。その経営判断が商品先物というものについてことごとく後ろ向きのものとなるとしたら、その最大の要因が現在の主務行政、商取行政にあるのは明らかである。たとえば、価格形成という意味では、ほぼニューヨークの写真相場にある東工取の金先物が、海外市況がむしろ強含んでいる状況のなかで、二万枚を切るという薄商いとなる国内市場のありようが意味するものとは何か。これは、商品取引所法から商品先物取引法に移行する過程のなかで、商品取引員と一般委託者を市場から排除し、マーケット全体をプロ化することで自らにとって心地の良い市場と業界の風景を夢想した商取行政が実現した市場が、実はプロからすらも見放されようとしているということを何よりも雄弁に物語っている。やはり、国内市場の鍵は一般投機(個人投資家)が握っている。先行き不透明が高まる一方の状況のなかで、実物資産である金を軸に行政、業界か官民挙げて「先物」の社会的定着にあらためて取り組むことから始めるしかあるまい。

 

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