不確実性高まる市場で金の戦略的価値強調=WGC

 ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は1日、経済の不確実性が高まる中でポートフォリオにおける金の戦略的価値を分析したレポートを発表した。米国主導の保護貿易措置により世界経済の先行きが不透明になる中、金が持つ分散効果や流動性の高さがインド投資家のポートフォリオ強化に貢献すると指摘している。

 同レポートによると、2025年は楽観的な見通しで始まったものの、米国による関税引き上げや保護主義的措置の波が世界の貿易フローを混乱させ、金融市場を動揺させている。こうした環境下で金は「長期的リターンの提供」「ポートフォリオ多様化の促進」「高い流動性の確保」という3つの特性を通じてポートフォリオを強化する役割が増しているという。

 インド市場においては、国内インフレ率が6%を超える高インフレ期において、金価格が年平均12.6%上昇するという実績が示されている。物価上昇時に単に資本を保全するだけでなく、実質的な成長も実現できる資産として評価できる。

 金の重要な特徴として、市場の急落時に株式との負の相関関係が強まることが挙げられる。危機的状況下では多くの資産クラスの相関が高まりポートフォリオ保護機能が低下する中、金はシステミックリスク時に正のリターンを生み出す傾向があるとレポートは指摘する。

 流動性の面でも、金市場は約16.1兆ドル規模と推計され、2023年の1日平均取引高が約1630億ドル、2024年は2330億ドル、2025年3月には2980億ドルまで拡大。金融ストレス時にも流動性が確保される点が強みである。

 WGCの分析では、インドの平均的なポートフォリオに7.5%、10%、12.5%、あるいは15%の金を配分することでリスク調整後リターンが向上し、下落率を抑制できることが示された。伝統的な株式・債券ポートフォリオに金を加えることで、ボラティリティを低減しながら長期的な成長も可能になる。

 経済・金融市場が保護貿易の拡大や物価上昇圧力、市場ボラティリティの高まりに直面する中、資産保全の重要性は一層高まっている。WGCは金がインフレへのヘッジや不確実性への対応力を持つことから、今日の変動の激しい環境において必要不可欠な戦略的資産だと結論付けている。

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