ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は8日、4月の金市場分析レポートを発表し、米ドル安と市場ボラティリティの高まりを背景に金価格が一時3500ドル/オンスを超え、月間で6%上昇したと報告した。年初来の上昇率は26.6%に達し、主要資産クラスを大きく上回るパフォーマンスを示している。
WGCの分析によると、4月の金価格上昇の主な要因は米ドルの大幅下落、市場ボラティリティの急上昇、地政学的懸念の拡大の3点である。一方で、4カ月連続の力強い上昇を受け、一部投資家による利益確定の動きが価格上昇の抑制要因となった。
現在の金相場の急騰を支える背景として、米国の貿易政策をめぐる不確実性、ドル安、インフレ期待の高まりと債券利回りの低下、中央銀行による継続的な金需要が挙げられる。特に貿易政策をめぐる懸念は、WGCの試算によれば年初来の金価格上昇の10~15%に寄与している。
投資資金の流入も顕著である。金ETFは第1四半期に210億ドルの資金流入を記録し、4月にはさらに110億ドルが流入した。米国のファンドが主導する一方、中国のファンドは年初来で保有量を77%増加させており、アジア市場における構造的な変化を示唆している。
WGCは現在の上昇トレンドの持続性について「まだ余地がある」と分析する。西側市場の金ETF保有量は過去最高を15%下回る水準にあり、投機的ポジションを示すCOMEX先物の買い越し残高も過去1年で最低水準にとどまっている。
インフレと金利の関係も金価格を支援する方向だ。米国の消費者・市場指標はともに短期的なインフレ上昇を予測しており、同時に債券市場は景気減速懸念から利下げを織り込んでいる。WGCの分析では、現在の環境下ではインフレ上昇による金価格の押し上げ効果が、金利上昇による下押し圧力を上回る可能性が高い。
一方で、価格高騰によるジュエリー需要の鈍化という課題もある。消費者は高値に適応するには時間を要し、経済状況悪化によるリサイクル供給の増加も価格下押し要因となりうる。中央銀行の需要も堅調ながら、急速な価格上昇局面では一時的に購入ペースが減速する可能性がある。
WGCは金価格の上昇持続の構造的要因として、米国政策とその影響への不確実性、インフレ期待の高まりと金利低下の可能性、過去の上昇サイクルと比較して蓄積水準が低いことを挙げている。ただし、利益確定や貿易交渉の進展によって一時的な調整も起こりうるとし、長期的なトレンド維持には消費者が高値に適応する時間が必要だと結論付けている。