金とドル、異例の同時高進む=地政学リスクで関係変化=CMEレポート

 金とドルが歴史的な逆相関から外れ、同時に上昇するという異例の市場動向が続いている。米商品先物取引所(CME)グループが12日公表したレポートで指摘した。地政学リスクの高まりや各国中央銀行の積極的な金購入が背景だという。

 CMEグループのレポート「Gold and the U.S. Dollar: An Evolving Relationship?」によると、金とドルは伝統的に逆相関の関係にあった。金はドル建てで取引されるため、ドル高になれば金価格は下落するのが通例だった。

 しかし2023年から24年にかけて、金価格が2000ドル超に上昇し過去最高値を更新する一方、米ドル指数も底堅く推移。この理由として、ロシア・ウクライナ紛争や中東情勢の不安定化による安全資産需要の高まりが挙げられる。

 レポートの著者であるPath Trading Partnersのボブ・イアッキーノ氏は、中央銀行の動向も重要な要因だと指摘する。「中国、ロシアや新興国の中央銀行がドル依存を減らすため、歴史的規模で金準備を増やしている」として、これが金価格を下支えしているという。

 インフレ懸念も金価格の上昇に寄与している。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めにもかかわらず、インフレが長期化するとの市場見通しが根強い。FRBが金融緩和に転じる中でもインフレが続くとの観測が、金価格を押し上げる展開に。

 2025年に入っても不確実性は継続。米中の貿易摩擦などを反映し、金価格は4月22日に過去最高値を更新。4月の金オプション取引は日平均16万枚超と記録的な水準に達した。イアッキーノ氏は「金は単なるドルの逆の動きをする資産ではなく、リスク分散の重要な手段との認識が広がっている」と分析する。

 金価格はもはやドルの動きだけでなく、実質金利やインフレ懸念、地政学リスクなどの影響を強く受けるようになったと同レポートは結論づけている。世界的な不確実性が続く中、投資家には従来の相関関係にとらわれない柔軟な戦略が求められるとしている。

タイトルとURLをコピーしました