堂島取引所は30日、新社長にSBI証券出身の柴野弘憲氏が就任する人事を発表した。2025年3月期決算は本業の営業赤字が9億円弱に達したが、不動産売却益で最終黒字を確保した。デジタル金融に強い新体制で、SBIグループ主導の事業再建を本格化させる。
経営の立て直しはSBIグループが主導する。新社長の柴野氏はネット証券や暗号資産関連会社での経歴が長く、ITと金融に精通する。低迷する商品先物からの脱却と、デジタル資産を軸にした新たな収益モデル構築の舵取りを託された形だ。
脇を固める布陣も、取引所の未来像をうかがわせる。社外取締役には米デリバティブ最大手CMEグループ日本法人代表を務め、現在は金融庁参事でもある数原泉氏や、元こども家庭庁担当相の小倉將信氏が新たに就任。国際的な市場運営ノウハウと政策面からの後押しを取り込み、経営基盤の強化を図る。
ただ、再建への道のりは依然として険しい。30日発表の25年3月期決算は、本業のもうけを示す営業損益が8億8900万円の赤字だった。取引関連収入などが伸び悩む一方、営業費用が膨らみ、収益力の低さが浮き彫りとなった。
保有不動産の売却により29億円を超える特別利益を計上したことで、最終的な純利益は17億8200万円の黒字を確保した。ただ、これは一過性の要因に過ぎない。財務の健全性を示す利益剰余金も1億4800万円のマイナスと、財務基盤の脆弱性は残る。
今回の経営刷新は、伝統的な商品先物からの転換を明確に示唆している。新経営陣の経歴からは、不動産などを裏付けとするセキュリティトークン(ST)といったデジタル資産を扱う「第3の取引所」への変貌が本命シナリオとみられる。新体制が投資家を惹きつける商品を迅速に提供し、市場に流動性を呼び込めるか。取引所としての真価が問われる正念場だ。