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コメと金と業界の予感


時代遅れの官僚主義は無用

 コメ(米穀)先物取引がスタートした。初日の8日は、東京穀物商品取引所(渡辺好明社長)については、基準値が低め設定だったこともあり、放射線量懸念を背景とする2011年産の品不足を見越した買い殺到で再三にわたってCB(サーキット・ブレーカー)が作動。結局、値が付かないまま取引を終了する結果となった。一方、関西商品取引所(岡本安明理事長)は2012年1月限が19,210円で寄り付くなど、こちらも新穀の需給ひっ迫予想を反映した高値発進となった。初日の出来高は11,289枚だった。翌9日は東穀取が基準値の引き上げ、CBの値幅を拡大したことで12年1月限が17,280円で成立するなど、ついに東西でコメ先物が完全復活した。

混乱のスタート

 渡辺東穀取社長は9日、「主食(コメ)に関わる農業政策が大きく転換している中で、先物市場が公正な価格の指標を提示することと保険つなぎの場を設けるという点で、大変重要な役割を果たせるものと確信している」とのコメントを発表した。岡本関西取理事長は、「先物の発祥が大坂・堂島であることは世界が周知している。その中で、72年ぶりにこの(関西商品)取引所に先物の原点であるコメが復活するのは本当に意義深い。こん後とも(当業者の皆さんに)キチッとご理解頂けるようにして行きたい」と述べている。

 JAグループ(全国農業協同組合中央会など)が試験上場反対と本上場絶対阻止の姿勢を鮮明とするなかで、コメ先物が定着するか否かはやはり、生産者や流通・卸から加工業者まで含めた当業者の参加いかんにかかっているといえよう。コメは純粋に国産の農産物であり、しかも主食であるために必然的に大型商品であることを運命づけられているうえに、ジャポニカ米という巨大市場を背景としているという意味で国際商品中の国際商品である。そうした商品が上場したということは、その経緯はともかく、国内商品先物市場にとって〝追い風″であることは論を待たない。JAの姿勢はともかく、最大の当業者を振り向かせるためにも、「利用しないと大損だ」と彼らの思考回路が転換するような「価格指標力のある市場」を業界がいかに構築できるかが問われている。かりに、そのことに失敗したとすれば、結局はニューヨーク市場の写真相場を脱し切れないでいる金先物の轍を踏むことにもなりかねまい。

神の子か鬼の子か

 とはいえ、金の上場が地金商の完全拒否にもかかわらず、価格独占に風穴を開けるとともに、地金商の売り値と買い値の一方的なギャップ(手数料)の縮小をもたらしたことは明白な事実である。金という決して必需品ではない高級材であるがゆえに、社会的には不必要なまでに無視されているが、これは商品先物市場(と業界)の大きな貢献であったことは間違いない。いままた、コメも最大の当業者不在のなかでのスタートを余儀なくされている。しかし、コメの生産・流通を巡る環境と状況が大きく変化しようとしているなかで、コメ上場が農林水産省内部の政策論のハザマと、同省と経済産業省による商取行政、ひいては金融庁とも絡んだ総合先物行政を巡る主導権争いのなかで、ある意味、突発的に誕生してきた側面も否定し得ないものがある。

 果たして、この赤子(コメ先物)は神童なのか、あるいは鬼っ子なのかは、これからの市場のありようにかかっていることはいうまでもない。3・11(東日本大震災)以後、日本は大きく変わったという。とりわけ、福島第一原発の事故が加わったことで、たんなる大天災に見舞われたというばかりでなく、大量の放射性物質による“民族総被曝″という、人類史上かつてない体験を日本人はいま、強いられている。事実上の人体実験が向こう何十年も(場合によっては世紀をまたいでまでも)続くという過酷な状況にあるのが、いまの日本と日本人の実態である。

ドロドロした思惑も

 こうした、あまりにも特別な事態のなかでコメは上場された。2年間の試験上場とその成否を予想することは困難ではあるが、それゆえ、この上場は絶好にして絶妙のタイミングであったのではないか。放射能汚染や異常気象による不安要素が相次ぐなか、これでコメの価格指標が国内になかったら、一体いかなることになったのかを考えれば、まさにこれも〝天の配剤″といえるのではないか。大震災以後の混乱のなかで、木っ端役人どもが旧来型の役人根性に基づく思考能力を失って判断停止になったエア・ポケットでコメが上場されたのだとしたら、それはそれで、まさしく結果オーライではある。もっとも、官僚特有の天下りを含めた行政権限を巡る思惑が、上場とそれとセットになったかのような東工取への農産物市場移管の白紙撤回の背景にあるのだとしたら、事態は相変わらず、恐るべき〝時代遅れ″の官至上主義の真っ只中にあるということになるが…。

(商取フォーラム紙 8/15号 紙面より)

 

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