東京商品取引所は29日、電力先物の取引対象に新たに中部エリアを追加すると発表した。これまで対象だった東京・関西両エリアに加え、中部独自の価格変動リスクに対応する手段を提供し、ヘッジ取引の利便性向上を狙う。2026年度春頃の取引開始を予定し、制度案は29日からパブリックコメントを募集している。
追加される商品はJEPX(日本卸電力取引所)スポット市場における中部エリアプライスの月間平均価格および年度平均価格を基準とする。具体的には、中部ベースロード電力、日中ロード電力、年度ベースロード電力、年度日中ロード電力で構成され、それぞれ「月間物取引」「年度物取引」へ対応する。取引期間は月間物が各月1日から月末、年度物が4月1日から翌年3月31日まで。
提供単位は、ベースロード電力が暦日×24時間×100キロワット時、日中ロード電力が平日×12時間×100キロワット時。呼値は1キロワット時単位で1銭刻み、サーキットブレーカーは基準値から上下8円。立会時間は日中(午前8時45分~午後3時40分)と夜間(午後4時30分~午後6時55分)に区分され、最新のJ-GATE3.0を活用した電子取引による。注文形態は指値、成行を組み合わせ、月間物は他エリア商品とのスプレッド取引も実施可能。
月間物の取引期限は直近を含む24カ月、年度物は2年度分とし、各期ごとにカスケーディングによる建玉整理を行う。決済は現金決済方式を採用し、最終決済価格は対象期間のJEPX平均を適用、クリアリング業務は日本証券クリアリング機構が担う。
手数料体系は中部エリア・ベースロード電力1枚あたり146円、日中ロード電力49円、年度ベースロード電力1,752円、年度日中ロード電力588円で、東・西エリア商品と同水準。ギブアップ手数料や清算手数料も既存枠組みに準拠する。情報開示は、四本値や取引高、投資部門別明細を既存と同様に行い、市場透明性も確保する方針。
取引制度運営や価格安定策として、即時約定可能値幅(寄付6円・ザラバ5円・引板6円)や異常時の取引規制も設ける。年度物取引には立会外契約やEFP・EFS取引も導入し、取引柔軟性の拡充を図る構え。