市場縮小が急加速

再生への正念場はいま

 

 結局、9月の商品先物総出来高(オプション除く)は3ヵ月連続減の180万6561枚と、前月比15・2%減少した。前年同月比は26・1%減で、6ヶ月連続での前年同月比増はならなかった。月間出来高が200万枚を割り込むのは昨年4月の196万2478枚以来1年5ヵ月ぶりで、直近の最低記録となった。一日平均出来高は2ヵ月連続の10万枚割れ。年初来累計は2231万9160二枚で、前年同期比10・0%の増加となっている。また、今年4-9月(2013年上期)は1421万7483枚と、前年同期比9・2%増加した。

 

農産物不振続く

 

 取引別では東京商品取引所(江崎格社長)は178万6216枚と、昨年8月以来一年ぶりに200万枚を下回った。これが、総出来高の200万枚割れに直結したわけだが、いずれにしても金を始めとする貴金属の売買不振が全体の出来高を左右するという近年の傾向が一段と強まっている格好だ。こうしたなかで、大阪堂島商品取引所(岡本安明理事長)を含めた農産物・砂糖市場の低迷が加速している。本来なら、商品先物の伝統的な銘柄(上場商品)として、大豆やトウモロコシ、粗糖が投機人気を集めて良いハズだが、東京穀物商品取引所が解散に追い込まれた最大の要因である不招請勧誘禁止の弊害をモロにかぶることで、いまや農産物市場全体が機能不全状態に陥っている。

 

 さらに加えて、米議会が与野党(民主、共和両党)対立の結果、下院で予算が通過せず、政府機関が閉鎖される事態に突入。このため、各種の政府統計の発表がストップして、米国の商品先物市場が通常の価格形成に支障をきたす展開に追い込まれている。さらには、このままの対立構造が続けば政府債務上限の引き上げが見送られるとなれば、米国債のデフォルトの公算さえ高まっている。現実にそのような事態となれば、米国はもちろん、世界の金融・資本市場が大混乱に陥るのは必至という極めて危険な段階が訪れようとしている。これが商品先物市場に波及するのは不可避で、先行き不透明による警戒感から内外で商品先物の売買が急速に手控えられてきた。

 

市場振興が急務

 

 現実に、8-9月と一日平均出来高が10万枚割れとなったのは先述した通りだが、10月入り以降は出来高減に拍車がかかり、一日8万枚に届かない日が急増している。もちろん、米国でのオバマ大統領と共和党のほとんど”私闘”ともいえる政策対立が収束すれば解決するとはいえ、この対立が長期化するとすれば、市場(マーケット)がいかに政治に対して無力かがあらためて表面化し、今後の市場ビジネスの行方に深刻な影響を与えるキッカケとなるかもしれない。いずれにしても、国内の商品先物市場が出来高不振による流動性の枯渇によって、価格形成にせよリスクヘッジ、投資・投機対象(手段)とするにせよ、その機能と役割を十全に果すだけ規模(ボリウム)を失っている事実に変わりはない。こうした現状に対し、主務省(行政)、取引所はもちろん、業界(日本商品先物振興協会)も一致して、取引の活性化、市場振興の必要性を確認している。当面の方策としては、銘柄の拡大(上場商品の追加)、規制の見直しなどによって市場参加者の拡大・多様化を目指すという方向性を打ち出している。

 

 今月からは産業構造審議会商品先物取引小委員会が開催される。同小委員会では、①LNG(液化天然ガス)や電力先物などの新規上場②規制(の運用)の見直し――が議論される見通しであるが、これまでの産構審の議論が商品先物の拡大や発展、成長をもたらしたことは皆無であったという事実を、各委員には何よりも再認識して議論に臨んでもらいたいものである。とりわけ、商品先物市場の必要性を前提にするのであれば、今度こそ社会にいかに定着させるか、あるいは社会の広範な層がいかに有効に利用できるかについての観点こそが不可欠である。このことを産構審が議論の前提としない限り、結局はこれまでの繰り返しに終るのではないか。

 

残り時間は少ない

 

 かつて行政は、取引所法に基づく業界運営を執行しながら、一方で商品先物取引を「(一般人は)やってはならない取引」と断定して何ら矛盾を感じていなかった。それがいまや、行政白身が、産業インフラだ、資産運用のためには個人の参加が必要だ――との立場を明確にしている。同時に、規制のための監督権限は決して手放そうとはしない。一体、どちらの顔が本当なのだろうか。どちらもが本音だとしたら、業界は今後もこうした二重基準に振り回されるに違いない。市場の真の担い手が誰であったのかがハッキリとしたいまこそ、日本人の、日本人のためのマーケットを再建しておかないと、後になって失ったものの大きさを思い知ることになりかねまい。残された時間は想像以上に少ないのではないか…。