業界の底流で蠢くもの【10/15号紙面】

突破口は自らの手で開け

国内商品先物市場がふたたび、停滞感を強めている。とくに3月11日の東日本大震災以降は、金の商いが膨らめば総出来高が拡大し、反対に金が萎めば市場全体が沈滞するというパターンが定着してしまった。その典型が8月の2年10ヶ月ぶりの出来高水準(427万枚)に繋がったわけだが、あれほどの期待感(希望的観測も含めて)のなかで復活したコメの試験上場以後も、この〝金頼み″傾向は、かえってさらに強まるという何とも皮肉な展開となっている。この流れを反映してか、9月の総出来高は金の国際市況の急反落を受けて前月比20.9%の減少となった。それでも、前年同月比は4ヶ月連続の増加となり、9月は同57.7%もの急増を記録した。

コメは失敗か

しかし、これで市場全体の復調とはならないことが、業界そのものの停滞・低迷・不振ムードの根深さを物語っているといえよう。それは、コメ上場の明らかな〝失敗″に起因している。東京工業品取引所の上期(4~9月)の出来高は1665万4978枚となり、一日平均出来高(124営業日)は13万4314枚と、経営目標の13万枚を達成。黒字を確保した。通期は下期15万枚で14万枚が目標となっており、これは今後の出来高しだいということになるが、上期にはあった〝金特需″が持続するか否かが焦点となるわけで、神頼みにも等しい金頼みが依然として続くことになる。

一方、業界全体の事態を深刻にしたのは前述した通り、コメ市場のありようそのものにある。周知の通り、コメ先物の出来高は不振(低迷)を極めている。国際市況が史上最高値を何度も更新し、東工取の金先物も上場来高値を示現。価格(相場そのものの)高騰という最大の支援材料のあった金と比較するのは無理があるとはいえ、全農(JA)という最大の生産者(当業者)が上場そのものに絶対反対というスタンスを転換する可能性が皆無のなかで、主務省である農林水産省が試験上場を認可した行政当事者であるにもかかわらず、一切、市場の動向に恐らくは意図的に全くの無関心を決め込むなか、一般投資家だけで純国内商品で、しかも主食という先物商品の市場機能を過不足なく成立させるための流動性を創出することは事実上、不可能である。

傷ついた業態

何よりも、不招請勧誘が禁止され、一連の勧誘規制の強化によって、商品先物全体に対する受託ビジネス(かつての専業取引員)が大きく傷ついてしまったという業界の現状を鑑みれば、たとえば金のような、明らかに資産運用手段としての強力な商品性を有しているとは言い難いコメに関して、ヘッジ機能発揮の前提条件が整備されていない段階での上場認可は、いまとなってみれば試験上場制度の運用を隠れ蓑にした、〝本上場潰し″のみえすいたトリックだったのではないかとさえ邪推してみたくもなるというものである。

現実に、8月は東京穀物商品取引所が1,150枚、関西商品取引所が2,680枚だったコメ先物の一日平均出来高は9月はそれぞれ468枚、595枚に急減。さらに今月(6日現在)は362枚、524枚へと一段の縮小を余儀なくされている。東穀取が東工取への農産物市場移管を白紙撤回したことを受けて、日本商品先物振興協会は東穀取に対し抗議。「遺憾の意」を表明するとともに、今後の経営計画についての説明を求めている(すでに説明会を実施)が、業界には東穀取への不信感が高まっている。

その反映ということなのか、先物協会は関西取に対して、協会として同取引所のコメ先物市場の取引振興の支援を申し入れるとともに、同取引所の解散を含めた再編提言を撤回した。これにどれほどのインパクトと実効性があるのかは不明であるが、現状に対する業界人の苛立ちは良く分かるといえよう。しかも、効果的で即効性のある打開策がないとなればなおさらである。

出口の鍵とは?

8月の大復活(?)にもかかわらず、業界は先行き不安感、不透明感に覆われている。東工取躍進の原動力となったディーリング専業(いわゆるプロップハウス)の金取引について、東工取自体が発注規制(自重要請)をかけたこともあってか、同取の一日平均出来高は8月の17万5000枚、9月の16万枚から、今月に入ってからは13万2000枚強(6日現在)にまで減退してきた。下期15万枚の経営目標が絶対なのか、それとも行き過ぎたディーリングは「非」なのか、東工取の経営(市場)政策もまた不透明である。

コメの超薄商いは立会休止という最悪の事態すら招きかねまい。システム維持やコスト面からもそうした状況があり得ないとはいえまい。行政(官)の支援が期待できないというのなら、民の活力(パワー)を掘り起こすしか道はない。金もコメも、やはり鍵を握るのは一般(個人)投資家である。社会そのものが先物取引できる環境と条件の整備を業界自らがいかに用意できるかが問われている。

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