世界のデリバティブ市場、政治的混乱で取引活発化の見通し=FIA

世界的なデリバティブ市場の業界団体FIAは6日、2025年の市場動向に関する調査結果を発表した。調査は今年1~2月に世界各地の取引企業、ブローカー、取引所、清算機関などを対象に実施。政治不安や地政学的紛争の激化が取引活動増加の要因になるとの見方が支配的であることが明らかになった。

FIAが発表した業界調査によると、過半数の回答者が2025年にはデリバティブ取引量が増加すると予測している。従来、デリバティブ取引量を左右する主な要因は経済的基礎条件と考えられてきたが、今回は政治的な不安定さや地政学的な紛争が最も重要だと業界関係者は指摘する。特にウクライナでの紛争激化や昨年の米国選挙結果をめぐる不透明さが、市場でのリスクヘッジと期待値調整を促すと見込まれているためだ。

特に米国市場に関しては、規制緩和よりも貿易関税問題が取引活動に最も大きな影響を及ぼすと回答者は予測している。FIAのウォルト・ルッケン最高経営責任者は、「経済要因よりも政治的要因が今後のデリバティブ市場を動かしていくだろう」と述べ、市場の不透明感が一段と高まるとの認識を示した。

資産クラス別の成長可能性については、商品デリバティブが最も有望との見方が強い。次いで金利およびクレジット関連の派生商品がランキング上位を占めている。地域別では、欧米の主要市場を除くとインドと中東地域が高い成長余地を持つとの評価だ。

市場構造の変化への関心も高まっている。米国財務省証券市場が中央清算義務化に向かう中、複数の清算機関が参入を表明。回答者の半数以上が、複数の清算機関が競合することで市場にはメリットが生じると肯定的な見方を示した。また清算機関を選定する際に重視するポイントとして、「クロスマージニング」「証拠金算出方法」「バランスシート処理」が挙げられている。

一方、取引所と清算機関が一体化する「垂直統合」の潮流には、業界関係者の慎重な姿勢が目立つ。調査では半数近くがこの動きを否定的に捉え、積極的な評価は4分の1にとどまっている。従来の市場構造が変化することで透明性の低下や競争の阻害が進む可能性を懸念しているようだ。

昨今話題となっている予測市場(プレディクションマーケット)についても、慎重な見方が強い。予測市場が従来の先物取引市場に与える影響に関して、回答者の3分の1だけが肯定的評価を示した。残りの大半は、予測市場が先物取引業界にとって特に有益であるとは見ておらず、むしろ悪影響を懸念する声もある。

技術革新の影響として特筆すべき変化は、生成AI(ジェネレーティブAI)への関心の高まりだ。前年の調査では、「標準化推進」や「トークナイゼーションによる担保管理」が注目されていたが、今年は生成AIが最もインパクトの大きい技術として選ばれた。取引や清算のワークフローを効率化する可能性への期待感が高まっていることを示している。

調査はコンサルティング企業のクリシル・コーリション・グリニッジがFIAとの協力で実施し、回答者数は260名以上に上った。対象地域は北米が56%、欧州が27%を占め、残る17%がその他地域。回答者の職種別では清算業務や仲介業務、取引執行業務に従事する業界関係者が最も多く、資産運用会社やヘッジファンド、トレーディング会社、取引所やテクノロジーベンダーの関係者も含まれている。

 

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