農林水産省が24日公表したレポートで、コメの価格高騰が鮮明になった。堂島取引所の米穀指数先物は期先を中心に3万円を超える水準が常態化。現物の相対取引価格も過去最高を更新した。令和6年産米の需給逼迫が背景にあり、家計への影響も広がる。
農林水産省がまとめた米先物取引のシーズンレポートで、国内のコメ価格が歴史的な水準に高騰している実態が明らかになった。堂島取引所で取引される米穀指数先物は、令和7年3月から5月にかけて上昇基調が継続。特に期先である令和8年4月限は一時3万2000円台を付けるなど、3万円を超える価格水準が定着した。現物市場の価格上昇も著しい。令和6年産米の相対取引価格は、5月時点で60キログラムあたり2万7649円を記録。前年同月を8割近く上回る過去最高の水準だ。
価格高騰の主因は、需給の逼迫にある。令和7年4月末時点の民間在庫量は168万トンと、前年同月を12万トン下回った。これは近年で最も低い水準である。政府は需給緩和のため備蓄米の放出を進めるが、市場のタイト感を解消するには至っていない。取引関係者の間でも在庫の過少感を指摘する声が強い。
先物市場は高騰する価格を映し、不安定な値動きを見せる。期間中は価格が急変動し、売買を一時中断させるストップ高やストップ安が頻発した。これは市場の不安心理の表れといえる。取引の担い手は一部のネット証券経由の個人投資家が中心だ。建玉(未決済残高)をみると、生産者など実需に関連する「当業者」より、価格変動での利益を狙う「非当業者」の買い越しが目立つ。需給逼迫を背景とした投機的な資金が、価格上昇を一段と加速させている側面もあろう。
川下の家計や事業者への影響は深刻さを増す。総務省の小売物価統計によれば、5月のコシヒカリの価格は5キログラムあたり約4970円に達した。前年の2倍近い水準だ。POSデータでも平均価格は前年比でほぼ倍増している。米穀販売事業者の販売数量は前年同月比で減少傾向にあり、急激な価格上昇が消費者の買い控えを招いている可能性を示唆する。主食であるコメのコスト増は、中食・外食産業の経営にも大きな打撃だ。
今後の最大の焦点は、今秋に収穫期を迎える令和7年産米の生産動向に移る。記録的な米価高騰は、生産者の作付け意欲を刺激する可能性がある。一方で肥料などの生産資材価格も高止まりが続く。長期的なコメの消費減少トレンドと、天候不順などで短期的に需給が揺らぐ構造的な課題は根深い。食料安全保障の観点からも、安定供給に向けた生産基盤の維持が改めて問われている。