ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は5日、2024年第4四半期のプラチナ市場分析と2025年予測を発表した。2024年のプラチナ市場は総需要が258トンに達し、総供給量227トンを31トン上回り大幅な供給不足となった。2025年も26トンの供給不足が予想され、3年連続の構造的な需給ギャップが継続する見通しとなった。
世界のプラチナ供給は2024年に前年比3%増加したものの、2025年は南アフリカの生産減少や北米のパラジウム関連の減産により4%減少する見込みだ。特に南アフリカの鉱山供給は現在の低価格環境下で採算悪化に苦しんでおり、2025年には前年比6%減の121トンに落ち込む予測となっている。
リサイクル供給も低調が続く。2024年は2013年の調査開始以来最低水準の46トンとなり、2025年もわずか1%増の47トンにとどまる見通しだ。使用済み自動車触媒の供給制約と宝飾品リサイクルの減少が背景にある。WPICは当初予想していたリサイクル市場の改善が短期的に実現する可能性は低いとして、2025年のリサイクル供給量を前回予想から9トン下方修正した。
一方、需要面では自動車部門が引き続き堅調な動きを示している。2024年の自動車需要は内燃機関車とハイブリッド車の生産減少を受けて2%減の97トンとなったが、依然として高水準を維持している。WPICのトレヴァー・レイモンドCEOは「バッテリー式電気自動車の成長鈍化と内燃機関車の燃費・長寿命化が評価され始めている」と指摘した。2025年の自動車需要は1%減の96トンとわずかに減少するが、2020年以降の5年平均を大幅に上回る水準で推移する見込みだ。
宝飾品部門は2年連続の成長となった。2024年の世界プラチナ宝飾品需要は前年比8%増の62トンとなり、全地域で増加した。特筆すべきはインドの31%増、欧州と北米も過去最高を記録した。中国の宝飾品需要も2014年以降続いていた減少から転じて1%増となった。2025年の宝飾品需要は2%増の63トンと予想され、2019年以来初めて62トンを上回る見通しだ。
投資需要は2024年に前年比77%増の22トンへと大幅に拡大した。特に第4四半期は米国の関税発動をめぐる不確実性から多額の投資資金が流入した。ETF保有高は4トン増の103トンとなり、ニューヨーク証券取引所と東京商品取引所の在庫も急増した。2025年の投資需要は14%減の19トンとなるものの、引き続き高水準を維持する見通しだ。
地上在庫は急速に減少している。2024年末時点で105トン(前年比23%減)となり、2025年末には需要の4か月分に満たない79トン(25%減)まで減少する見込みだ。この状況について、レイモンドCEOは「構造的に供給が不足しているにもかかわらず、価格がまだ反応していない市場を無視することはますます難しくなる」と述べ、機関投資家の需要拡大による上振れリスクを指摘した。
投資環境の変化も見られる。2024年下期には世界第3位の小売業者コストコが北米でプラチナの地金・コインの販売を開始したほか、中国では国営のChina Gold Coin Groupがプラチナパンダやプラチナルナなどの新製品を発売し、投資需要を刺激した。また、金価格の高騰により宝飾品市場ではプラチナがホワイトゴールドに対してシェアを拡大しており、この傾向は2025年も続く見通しだ。
プラチナ市場は需給ギャップの拡大が続く中、供給構造の変化と新たな需要の創出が進んでいる。工業需要は化学セクターの減少によって2024年に1%弱減少し、2025年にはガラス生産能力拡大の一巡から14%減少する見通しだが、水素や医療など成長分野も存在する。